王太子妃になりたい令嬢と、王太子妃になる気などない次期女王。勘違いの果てに待つ、最高に痛快な結末!
「王太子妃になるのは、わたくしですわ!」
そんな自信満々の宣言から始まる、勘違いとすれ違い、そして自業自得のざまぁが楽しめる異世界恋愛作品です。
ただし、この物語には、ひとつ大きな問題があります。
そもそも、この国に王太子がいないのです。
しかも、主人公は王太子妃の座を争う令嬢どころか、次期女王と目される大公女。彼女が望んでいるのは、王子の寵愛でも王妃の座でもありません。自分が心から愛する男性と結ばれることなのです。
この設定を知った時点で、もう先の展開が気になって仕方ありません!
主人公のアナスタシアは、身分も知性も美貌も申し分ない女性。けれど、ただ高貴で美しいだけのヒロインではありません。自分の立場をよく理解し、他人の身勝手な思い込みに振り回されても、必要以上に感情的にならず、落ち着いて対処する姿が実に魅力的です。
そんな彼女を勝手に恋敵認定するのが、男爵令嬢のマリーナ。
彼女は王家唯一の男子であるイヴァンに愛されていると信じ、いずれ自分が王妃になる未来を疑っていません。そして、イヴァンの婚約者だと思い込んだアナスタシアに対して、堂々と身を引くよう迫ります。
ところが、ここで読者は気づくわけです。
いやいや、あなたの言っていること、何もかもおかしくありませんか!?
アナスタシアはイヴァンと婚約していません。イヴァンは王太子でもありません。そして、この国は女系相続を定めた女王国。将来の王妃になれると思い込んでいるマリーナの夢は、出発点からして盛大に間違っているのです。
この、登場人物たちの認識と現実の食い違いがたまりません。
しかも、マリーナだけが悪いわけではないのが面白いところ。彼女の思い込みの根本には、イヴァン自身の都合のよい解釈があります。
婚約者候補であることと、正式な婚約者であることは違う。将来、王配になる可能性があることと、国王になれることも違う。
そんな当たり前の区別すら、自分の願望に都合よくねじ曲げてしまうイヴァン。彼は自分が望んでいるのだから、いずれその通りになるはずだと考えているのです。
いや、ならないから!
読んでいるこちらのツッコミが止まりません。
そして、こういう人物が自信満々に振る舞えば振る舞うほど、最後にどんな現実を突きつけられるのか、期待が膨らんでいきます。
もちろん、この作品は勘違いざまぁだけではありません。
アナスタシアとクリメントの恋愛が、とても素敵なのです。
クリメントは、容姿端麗、頭脳明晰、文武両道の完璧な貴公子。それだけでも十分に魅力的なのですが、何より心をくすぐられるのは、アナスタシアに対する一途な愛情です。
彼女の好きな焼き菓子を用意し、さりげなく気遣い、彼女が喜べば自分も嬉しそうに微笑む。二人の間には、穏やかで温かな空気が流れています。
そして、普段は凛としているアナスタシアが、クリメントの前では表情を柔らかくするのもいい!
周囲から見れば、どう見ても両思い。本人たちも互いへの気持ちは定まっているのに、王配候補という立場や王家の事情があるため、正式な婚約発表には慎重にならざるを得ません。
だからこそ、二人が堂々と互いの愛を認め合う瞬間には、こちらまで幸せな気持ちになります。
特に素晴らしいのは、アナスタシアが自分の人生を自分で選ぶ女性として描かれていること。
次期女王という立場にありながら、政治的な都合だけで相手を選ぶのではありません。誰を愛し、誰と人生を歩むのか。その決定に、彼女自身の意思がしっかりと存在しています。
そして迎える卒業記念舞踏会。
イヴァンは大勢の人々の前で、アナスタシアとの婚約を認めさせようとします。本人としては、自分こそが彼女の相手にふさわしいというつもりなのでしょう。
しかし、そこで待っているのは、華麗なる逆転劇!
アナスタシアは一歩も引きません。婚約者候補と婚約者の違いを明確にし、クリメントへの愛を堂々と告げます。さらに女王や大公までもが登場し、この国の制度と王配という立場について、イヴァンの認識違いが次々と明らかになっていくのです。
ここは、まさに痛快のひと言。
自分の都合のよい未来ばかりを思い描いていたイヴァンが、現実を突きつけられて追い詰められていく。一方、自分こそが王妃になると信じていたマリーナも、頼みにしていた未来が根底から崩れ去ることになります。
しかも、誰かが悪意をもって二人を陥れたわけではありません。
自分の願望を優先し、他人の立場や意思を軽んじ、勝手な思い込みを積み重ねてきた。その結果が、皆の前で明らかになっただけなのです。
これぞ、自業自得のざまぁ!
他人を見下していた者が、自分の認識の甘さを突きつけられる展開が好きな方なら、きっと楽しめるはずです。
そして何より、ざまぁの後に残るのが、アナスタシアとクリメントの幸せだというところがいい。
主人公は、恋敵を打ち負かすことそのものを目的にしていたわけではありません。彼女にとって本当に大切なのは、愛する人と正式に結ばれ、自分が望む未来へ進むこと。
他人の勝手な思い込みに人生を左右されず、自分の意思で相手を選ぶ。その姿には、読んでいて清々しさを感じます。
恋愛、勘違い、身分差、王家の制度、そして痛快なざまぁ。
異世界恋愛で読みたい要素がぎゅっと詰まった一作です。
自信満々な悪役令嬢ならぬ勘違い令嬢の自滅を楽しみたい方も、溺愛系の貴公子と凛としたヒロインの恋に癒やされたい方も、ぜひ読んでみてください。
最後に、タイトルの意味が明らかになる瞬間の爽快感は格別です。
王太子妃ではありません。ええ、妃、ではね。
だって彼女は、誰かの妃になるために生きているのではないのですから。
自分自身が女王となり、自分が選んだ愛する人を王配に迎える。
そんなアナスタシアの晴れやかな未来に、心から拍手を送りたくなる物語でした!
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