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夢見る仔猫の雑記帳

創作サイト『夢見る仔猫』の雑記帳

とくちゃ(特殊法監督局掲示板・特殊法ちゃんねる)

婚約破棄をする前に、まず法律を読もう。――この王太子、救いようがないほど自業自得です(笑)

異世界恋愛の婚約破棄ものが好きな方、調子に乗った王太子が華麗に転落するざまぁ展開が大好物な方。ぜひ読んでいただきたい作品です!

本作は、カヌーン魔導王国の特殊法監督局が管理する掲示板、通称「特殊法ちゃんねる」、略して「とくちゃ」を舞台にした掲示板形式のお話。

スレッドのタイトルは、【真実の愛】特殊法案件にならないために相談するスレ。

……はい、この時点でもう嫌な予感しかしませんね(笑)。

相談者は、幼い頃から決められた婚約者がいる王太子。ところが学院で出会った男爵家の庶子に恋をしてしまい、どうにかして彼女と結婚したいというのです。

婚約者の公爵令嬢は美人で頭もよく、自分を立ててくれる女性。対する恋のお相手は、自分を褒めて癒やしてくれる女性。しかも、相談文からして、王太子の判断基準がいろいろとお察しなのが最高です。

そして、ここからが本作の面白いところ。

普通の婚約破棄ものなら、王太子が婚約者を一方的に断罪し、真実の愛を叫び、周囲が騒然となって……という展開を想像するでしょう。

しかし、この国には特殊法がある!

しかも、王族だからといって特別扱いしてもらえるわけではありません。

掲示板の住人たちは、王太子の身元に早々に気づきながらも、掲示板のルールを守って淡々と相談に回答していきます。そのやり取りが実に痛快!

「王位継承権を放棄して平民になる」

最初からこれです。

いや、王太子殿下。あなた、自分が何を望んでいるのか、本当に理解していますか?

王位は継ぎたい。愛する女性と結婚したい。彼女を王妃にしたい。けれど、婚約者の実家が王家を支える政治的な基盤になっていることは理解していない。王妃になれる家柄の条件も、王族の婚姻に求められる責任も、まるで分かっていない。

掲示板の住人たちが次々と現実を突きつけていく様子に、思わず笑ってしまいます。

さらに、真実の愛のお相手であるブリギッタの実態が明らかになるにつれて、王太子の見る目のなさにも呆れるばかり。

貴族社会で求められる礼儀作法も教養も身についておらず、社交の場でも問題を起こしている。そんな彼女を王妃にしたいと言い張る王太子に対し、周囲の貴族たちは至極まっとうな指摘を繰り返します。

ここが、なろう系のざまぁ好きにはたまらないところ!

誰かが無理やり王太子を陥れたわけではありません。婚約者が陰湿な罠を仕掛けたわけでもありません。王太子自身が、自分の立場も責任も理解せず、欲望のままに発言しているだけなのです。

しかも、発言すればするほど墓穴を掘っていく。

読者としては「もう黙って!」「それ以上言ったら取り返しがつかない!」とツッコミを入れたくなるのですが、本人はまったく気づかない。この絶妙な噛み合わなさが、掲示板形式と非常によく合っています。

そして、婚約者のアドリアーナがまた素晴らしい。

彼女は王太子に執着して泣きわめくような女性ではありません。政略結婚であることを理解し、王族の義務を果たすために必要なことを冷静に考えられる人物です。

王太子が勝手に盛り上がっている一方で、彼女は彼の愛情を奪い合うのではなく、現実的な解決策を提示する。この余裕と合理性が、王太子との対比をいっそう鮮明にしています。

婚約者に捨てられたからこそ彼女が輝く、というより、最初から輝いていた彼女の価値を王太子だけが理解できていなかったのですね。

もちろん、ざまぁの結末も見逃せません。

掲示板であれだけ忠告され、問題点を次々と指摘されても、王太子は自分の望みを諦められない。結果として、廃太子され、王籍からも外されて平民に落ちることになります。

自分の都合のよい未来だけを信じ、周囲の助言をまともに受け止めなかった男の末路として、なんとも見事な自業自得です。

しかも、本作は単に王太子が転落して終わりではありません。

物語の後半では、掲示板でのやり取りをきっかけに、新たな魔道具の開発につながる展開も描かれます。婚姻や出産をめぐる問題において、誰に責任があるのかを明らかにできるようになれば、理不尽に責められてきた人々も救われる。

ひとりの身勝手な王太子が引き起こした騒動が、思いもよらない形で社会を変えるきっかけになるのです。

ここが個人的にはとても好きなポイントでした。

ざまぁでスッキリさせるだけではなく、特殊法という仕組みが社会の中でどう機能し、どんな人々を守っているのかまで見えてくる。世界観に厚みがあり、読み終えたあとにも「この国、なかなか面白いな」と思わせてくれます。

そして何より、掲示板の住人たちの反応がいい!

王族相手でも遠慮なくツッコミを入れ、必要な情報を出し合い、時には呆れ、時には冷静に助言する。匿名掲示板ならではの軽妙な空気があり、会話のテンポも抜群です。

次々と明らかになる事情に「そういうことか!」と納得したり、王太子の発言に「何を言ってるんだ、この人は!」と笑ったり。気軽に読み進められるのに、設定や制度がきちんと物語に結びついているのが魅力です。

婚約破棄、真実の愛、身分差、王太子の失脚、そして自業自得のざまぁ。

なろう系異世界恋愛のおいしい要素を、掲示板形式というひと味違った切り口で楽しめる作品でした。

恋愛感情を免罪符にして何でも許されると思っている人には、ぜひこの国の特殊法を読んでいただきたいですね。

愛を貫くのは自由。でも、責任から逃げられるとは限らない。

そんな当たり前のことを、これでもかというほど痛快に教えてくれる一作です。

スカッとするざまぁが読みたい方、頭の切れる令嬢が好きな方、そして掲示板形式の軽妙な掛け合いが好きな方におすすめ!

読み終えたあと、きっとこう思うはずです。

王太子殿下、恋をする前に、まず法律を読んでください(笑)。

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